ベン・ホーガンのグリップ理論
グリップに関する理論・セオリーについて是非理解しておきたいことがあります。
それはずっと以前から「ゴルフのバイブル」とまで言われ続けてきたベン・ホーガンが1957年に残したレッスン本「The Modern Fundamentals of Golf」の記述が、世界中のゴルファー達に絶対的な影響力を現代まで及ぼしてきていることです。
ところが、ここで解説されているゴルフの基本中の基本のグリップ方式は、左手の親指をシャフトの真上に置いて、手の甲を目標方向に向けてクラブを握り込むウィークグリップなのです。
ベン・ホーガン自身はこれをナチュラルグリップと呼んでいます。
日本でも数多くのアマチュアゴルファーがこのグリップを習得しようとして、スライスやプッシュアウトに悩んだり、力のないボールを打ち続けてきました。
そして、このグリップ方法を聖書のように説いて教え回る先輩ゴルファーが大勢いたことも不運でした。
しかし、世界的なレッスンコーチであるレッドベターによる後年の研究発表によると、ホーガンは、プロゴルファーが一番忌み嫌う極端な「フック病」に長年悩まされ続けていたようです。そして、この対策としてウィークグリップを採用したのです。
バックスイングで左腕を時計方向に回転し、かつまたトップの位置で左手首を甲側に折るヒンジ動作を行うことなどによって、インパクトの時点ではクラブフェースを開きやすくしてフックを防止して、軽いフェードボールを打っていたことがわかりました。
その上、ホーガンは、自分のやり方のグリップ方式が一般人には向いていないと公言していたのです。
この打ち方でインパクト直前から右ヒザを左ヒザの方向に送り込むと、インパクトゾーンを長く保てますし、プロが要求するフェードボールやドローボールといった球筋を打ち分けるのには適しています。
しかし、ゴルフコース内の平坦ではない全てのライからこの打法をとるためには、思いも付かないほどの練習量が要求されたことでしょう。
そもそも体力面でプロには完全に劣るアマチュアゴルファーが、飛距離を求めるのは無理な話です。それにもかかわらず大勢のホーガン信者を作り出してきたことは大きな問題でした。
今から思えばその当時に、アーノルド・パーマーが、「アマチュアのグリップの方法としては、左手のナックルが2つか2つ半くらい見える程度にかぶせて打つ方が、左右の手の力のバランスがとれるので丁度良い」と主張していたのですが、思いの他注目を集めませんでした。
やはり四大メジャーを制し、グランドスラムを達成した偉人であるベン・ホーガンの影響力の前では影が薄かったのでしょう。
昔話は別にしても、個人はそれぞれに手の平や指の形が違うのですし、使うクラブも変わってくるのですから、完全に独立したグリップ方式は存在しないはずです。
よって、特定の名人や先輩達の経験がそのまま全て自分に当てはまることはありませんから、自分なりの工夫が当然必要になってきます。
ただし、その際にはあくまでもゴルフスイングの基本だけは抑えておく必要はあるでしょう。
フィンガーグリップとミート率
アベレージゴルファーの場合は左手をフィンガーに握る方が多くのメリットがあります。
グリップをつくる際には普通は左手から握ります。体に近いほうの左手から握ることの意味は、両手のバランス感覚を整えやすいという点が隠されています。
主なグリップの握り方を大別すると、フィンガーグリップとパームグリップに分けられます。フィンガーグリップは指で握る感覚が強いタイプ、パームグリップは手のひらで握るタイプを指します。
筋力に勝る男子プロゴルファーの一部にはパームグリップの人もいます。しかし、一般のアベレージゴルファーの場合はフィンガーグリップが適しているとされています。
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フィンガーグリップのやり方は、人差し指から小指までの4本の指の付け根をつなげるライン上にグリップをあてがって、小指、薬指、中指の3本でしっかり握る方法です。
グリップエンドは少し余り気味にして、左手の小指側から順番にグリップに巻きつけるように握れば、左手のグリップに安定感が出てくるでしょう。
左手の小指を中心にして、薬指、中指の3本に力点を置いて握るのがこのグリップ方式の基本といえます。
こうしてフィンガーグリップに握るメリットは、筋力が標準的で握力も平均的なゴルファーでも左手にそれほど力を入れなくても、左手にフィット感が生まれてくることです。
その際に、クラブを長く持ちすぎてはいけません。グリップエンドが左手のひらの中で遊んでくらいですと長すぎです。
こうなると、左手の小指側の3本でしっかりと握ることができずに、スイング中に左手グリップが緩んでしまうことが考えられます。
左手に一定のホールド感があって、スイングしている間もグリップが緩むことのない長さでクラブを持つようにするのが基本と言えるでしょう。
クラブを短めに持つ
グリップエンドを少し余るくらいに短く握ればグリップが安定しやすいというメリットばかりでなく、ミート率が向上するという効果も生まれてくることを頭に入れておきましょう。
左手の力の入れ具合を一定に保ちやすいので、スイング中の軌道のブレが最小限に抑えられて、それだけフェースの芯に当てやすくなるのです。
実際、トーナメントプロたちもクラブを短めに持っている人は以外にも多くいます。
逆にグリップエンドが左手の中に隠れてしまうくらいにクラブを長く持ってスイングしているゴルファーはほとんどいません。
指の力の入れ具合は、左手の親指と人差し指の2本に関しては小指側の3本ほどには力は入れません。グリップに軽く添える程度で十分でありそれ以上は必要ありません。
さらに、左手の親指と人差し指の付け根のV字の部分が右肩のほうを指し示すようにして左手をややかぶせ気味に握ると良いでしょう。
結果的に自分から見て左手の親指はグリップの真上よりも、少し右側に乗るのが自然な握り方です。
右手は中指、薬指の2本を引っかける
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ベン・ホーガンの「モダン・ゴルフ」に目を通したゴルファーなら既にご存知だと思われますが、ゴルフ界で有名なこの有名な本は繊細なタッチのイラストが添えられています。
それで、アドレスやゴルフスイングの基本をわかりやすく説明する意味では有効な手がかりを読者に与えてくれるのでしょう。
表紙にはベン・ホーガンがグリップをつくっている姿が描かれていますが、右手の中指と薬指の2本をグリップに引っかける感じを眺めて真似してみるのも良いでしょう。
右手の親指と人差し指、小指の3本はグリップから外してしまって、中指と薬指の2本をグリップに引っかけて握るということが意味するものは、右手のグリップのポイントがそこに存在するという証明かもしれまません。
右手は手のひらを大きく広げてから、中指と薬指の付け根のラインにグリップをあてがって、この2本をグリップにしっかりと引っかけて握ることが大切です。
右手のひらでプッシュする感覚
右手は中指と薬指の2本がメインになりますが、どうしてこの2本をグリップでしっかりフックするように握るのか望ましいのかと言えば、右手のひらでプッシュするイメージを強く持ちたいためと言えるでしょう。
その一番の要となるのがインパクトで、ボールをとらえる瞬間に右手の手のひらがターゲット方向に対して正対するという状態です。
そして、右手のひらでボールをターゲット方向に向かってプッシュするイメージによってゴルフスイングの方向性を安定化させる目的があります。
ゴルフスイングの最中に右手の中指と薬指の2本が緩んでしまえば、右手のグリップがルーズな状態になり、右手のひらでボールをプッシュするような感覚のインパクトはできなくなってしまいます。
結果的には様々なミスショットを誘発させる原因がここで生じてしまうことにつながるわけです。
右手の小指に関しては、オーバーラッピンググリップに握るタイプの方は左手の人差し指に右手小指を乗せることになります。
インターロッキンググリップに握るタイプの方なら右手小指を左手の人差し指と絡めて握るようにすべきです。
ただし右手の親指側に力を入れたり、鷲づかみの握り方になると右ヒジが突っ張ってきて、必然的に右肩が前に出た構えとなりやすいので注意が必要です。
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右肩や右腕はなるべく脱力して、右ヒジを体に少しだけ引きつけたフォームを作って、右手のひらをターゲット方向に向けた状態にします。
グリップの真横から添えるような握り方にすれば、右手のグリップを正しい形につくる上でも役に立つでしょう。
場合によっては、ゴルフクラブを胸の前で持って、ベンーホーガンの本の絵のように、右手の中指と薬指の2本と左手の親指でグリップをしっかり固定する状態ができているか確認してみるのも良いでしょう。
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